井戸水とは

井戸水の源泉は、地下水です。
その名の通り“井戸からくみ上げた水”というわけなんですね。
井戸の先につながっているのは、地下水を含め温泉天然ガスなどです。
これらの水源につながる設備のことを井戸といいます。
そのため井戸水=地下水ともいえるのです。
自然にろ過された天然水で、水道水を供給する浄水場のように人の手でキレイにしているわけではありません。
地下水のメカニズムですが、まず雨が降って地面に落ちると地中に浸透します。
そして地中に入った雨水は、数年、あるいは数万年かけて土や岩石によりろ過されるのです。
雨水にはさまざまな雑菌や物質が含まれていますが、自然によりろ過されてキレイな水になります。

 

 

一般的にスーパーやコンビニなどで販売されているボトル入りのミネラルウォーターも、井戸水と同じです。

特別な処理を人工的に施さず、地層などを通過して自然の中でろ過され、ミネラルなどの成分が豊富に溶け込んだ水として、国の品質基準をクリアしたものが販売されています。

また、井戸水の中には温泉や天然ガスが含まれることがあります。
そのため、井戸水といっても水源によってはミネラルウォーターのように成分や味が異なるわけです。
井戸は水道が普及していない時代のライフラインとして人々の暮らしを支えていました。
地域によっては、今でも井戸を使っているというご家庭もあるかと思います。

 

井戸水には2種類ある

細かく分類すると、井戸水には「不圧地下水」と「被圧地下水」の2種類があります。
被圧、不圧とは地中にある水を含んだ地層のことで、どちらの地層を流れているかによって水にかかる圧力が変わります。
そもそも井戸には深井戸と浅井戸の2種類があって、不圧地下水は浅井戸、被圧地下水は深井戸で使用されています。
ナチュラルミネラルウォーターと呼ばれているのは、深井戸水のことです。
井戸の水面から掘られている距離が8m以内で、そこからくみ上げている水を浅井戸水といい、30m以内を深井戸水といいます。
深井戸水の大きな特徴は、地表による影響を受けないことでしょう。
被圧帯水層は、岩盤やシルト層、粘土層などの層により上下に挟まれています。
被圧帯水層は水温や水量に一定の圧力がかかっているため、菌の繁殖なども抑えられると考えられるのです。
また水質が保たれているうえに深層部にあることでミネラルが豊富。
水質の安全性も高いため、汚染されていない水としてくみ上げられているのです。

ただし深い場所を通っているから必ずしも安全というわけではありません。
何らかの原因で雑菌が繁殖することもあります。井戸水を安全に使うためには、水質の管理を自分で行わなくてはなりません。

地表からの不純物を含む恐れがほとんど無いため、ナチュラルミネラルウォーターとして市販で販売できるというわけなのですね。
一方、浅井戸水は飲み水としてではなく、農作物などの散水用に利用されることが一般的になります。
掘られている距離が浅いために、地表からの影響を受けやすく不純物や細菌などが混ざる可能性があるためです。
こうして同じ井戸水でも、その用途や水質は大きく異なります。

 

水道水との違い

水道水は河川や池などの自然から水をくみ上げており、水源のひとつに地下水もあります。
井戸水と水道水の大きな違いは、水に処理が加えられているかどうかです。
水道水の場合は、水源からくみ上げた水の不純物を取り除く際に薬品が用いられています。
地下水だけでなく、湖や河川など、汚染されている可能性のある場所から水をくみ上げることを考慮し、水道管や受水槽内での汚染を防止するために薬品が使用されています。
水源が同じ地下水だとしても、水道管や受水槽を通すとなると水の水質を保つために必要な処理も変わってきます。

井戸水を使うメリット

昔は現代ほど水道が普及しておらず、井戸水を使うことが一般的でした。
現在、水道が普及していても、あえて井戸水を使う地域や家庭があります。
その理由には、多くのメリットがあるからかもしれません。

 

 

水温が一定

水道水は水道管を通って各家庭の蛇口まで運ばれます。
水道管は地表から近い場所を通っているため、外気の影響を受けやすい環境にあります。
夏場に蛇口をひねって水がぬるいと感じたり、冬場に水が冷たいと感じたりするのは水道管の位置が関係しているからです。
一方井戸水は水道管に比べて地表から深い場所を水源としているので、地表から深い場所は外気の影響を受けにくく、1年を通してほぼ一定の温度を保っています。
そのため、地下を通っている水の温度は変化しにくく、常にひんやりとした心地よい冷たさを保っています。

 

コストを下げることができる

道水を使うと料金が発生します。
料金には2種類あり、「基本料金」と「使用料金」です。
これらの料金は水の安全性を保つ処理を行うために使われています。
水道水の使用を控えれば使用料金を抑えることはできますけど、基本料金は水道が通っている限り必ず支払わなければなりません。
また使用を控えるといっても、毎日の生活において水は必要不可欠ですし、頑張っても抑えられる範囲に限度があります。
ですが、できればさらに安く抑えたいと考える方もおられるかもしれません。
井戸水の場合は基本料金だけでなく使用料金も不要です。
そのため、お風呂やトイレ、洗濯などに井戸水を使用するだけでコストを下げる工夫をしていると言えるでしょう。
水を多く使う農家だけでなく、水道料金を抑えたいという方にとっては井戸水の人気が高くなっています。

 

災害時でも利用できる

日本は自然災害が多い国です。
毎年各地で甚大な被害が起き、その度にライフラインが止まってしまい生活が困難な状況に陥っています。
井戸の水は水道管を通っていないため、断水時でも問題なく使うことができます。
最近の井戸は電気で水を汲み上げできる設備があり、日常生活での使用もハードルが低くなっています。

仮に停電が起きて電気で汲み上げができなくなっても、人力で汲み上げれば使えるため、断水時の対策として家庭用に取り入れるケースもあります。

 

においや癖がない

水道水に施される処理によって水に臭いがついてしまうことがあります。
水に臭いがついていると、口に含んだ際に独特のクセを感じてしまい、水道水が苦手と感じる方も多いようです。
一方、井戸水には人工的な処理が加えられていません。
そのため、臭いや癖がなく非常に飲みやすく感じられます。

ただし、井戸水を飲み水として使用するためには、水質検査などが必要になります。
検査されていない井戸水を飲むと、感染症などにかかるリスクがあるので注意しましょう。

井戸水を使うデメリット

井戸水を使うメリットを見ていると、井戸水が万能のように思えるかもしれませんけど、実際はデメリットも多くあります。
井戸水を取り入れたいと考えている方は、デメリットも理解しておきましょう。

 

イニシャルコストがかかる

井戸水自体の使用は無料ですが、安全に使うためには事前の準備が必要になります。
まず、井戸を作るための機械や道具を揃えなければなりません。
さらに、水脈までの穴掘りや水質検査、汲み上げ装置などを設置するための費用がかかります。
井戸の深さにもよりますが、設置するために安くても40万円程度は必要になります。
また、井戸水を使用するためには水質検査をしなくてはなりません。
水質は土地の状態や周囲の環境によって異なるため、十分な水質が得られないこともあります。
水質検査は定期的に行う必要があり、飲用の場合は年一度の検査が必須です。
また、生活用と飲用で検査項目が異なります。
飲用として井戸水を使う場合の検査費用は20〜30万円近くかかります。
井戸は作って終わりというわけではありません
生活用と飲用ではそれぞれ定められた期間の間に高圧洗浄が必要です。

電気式のポンプを設置する場合は電気代なども発生しますので、場合によっては井戸を設置するよりも水道水のみを使う方が安くつくケースもあります。

 

水質や水量に問題がある場合もある

地域・場所により地下水の水質や水量は異なるため、どこでも必要量の地下水をくみ上げることができるとは限りませんし、そのままでは使えない水質である場合があります。
また、井戸が浅い場合は特に、近隣の土壌汚染などの影響を受けるなど、水質が安定しないこともあります。

 

停電時は使えない

電気式の汲み上げポンプを設置している場合、停電が起こると使えなくなってしまいます。
メリットでもご紹介したように手動で汲み上げれば問題なく使えますが、何も準備をしていないままでは停電時に困ってしまいます。
電気式のポンプを設置する場合は手動用ポンプも設置する、または非常時に使うことができる予備電源を設置しておく必要があります。
しかし、これらにも当然費用が掛かることを覚えておきましょう。

 

井戸水を使う際の注意点

もし井戸水を使っている最中にこれらのサインが出たら使用を止めましょう。

  1. 井戸水の異常(濁りや異物の混入、異臭や味、色がある)
  2. 井戸水に汚染が考えられる
  3. 水質検査で基準値を上回っている

井戸水は処理を施さないため、汚染や周囲環境の影響を受けやすくなっています。
使用を続けると健康被害に発展する可能性があるため、異常が見られた場合は速やかに最寄りの保健所や役所に連絡しましょう。

 

法律や条例による規制がある

環境省のホームページには都道府県ごとの「地下水採取規制に関する条例等 項目」が掲載されています。
項目の中には地盤沈下の防止対策の必要事項などが記載されており、必ず従わなければなりません。
井戸を作りたい場合は最初にこれらの項目について目を通し、遵守できるかを検討してから行いましょう。

 

まとめ

井戸水は便利な存在である反面、常に安全な状態で使えるものとは限りません。昨日までは問題なく使えていても、突然状況が変化することもあります。
水道は国の水質基準に則って水道事業者のもと適切に管理されているだけでなく、トラブルが起きた際は専門業者に連絡することで早めに解決することができます。
井戸水を使う場合はそれだけに頼らず、水道水と使い分けるのが良いでしょう。水道水と井戸水を一緒に使うことでより良い暮らしを目指しましょう。

 

 

 

 

 

井戸水を利用している方へ

井戸水については有害物質に汚染されていることも考えられます。
安心して井戸水を飲むために井戸の適正管理を心がけて、水質検査を受けましょう。

 

 

井戸水を飲用に利用している方は、下記に気をつけて管理しましょう。

    • 井戸やその周辺にみだりに人や動物が入らないようにしましょう。
    • 色・濁り・臭い・味について、異常がないか毎日、確認しましょう。
    • 1年以内ごとに1回、水質検査を受け、飲用に適しているか確認しましょう。
    • 井戸周辺に異常が無いか、清潔に保たれているかなど定期的に点検しましょう。

水質検査については、厚生労働大臣の登録を受けた水質検査機関で受けることができます。

 

汚染が判明した場合について

汚染が判明した場合は、直ちに給水を停止し、利用者にその旨を周知するとともに、最寄りの保健所へ相談しましょう。
原因を調査して原因を取り除いた後は、水質検査を実施して安全を確認してから使用してください。

なお、市町村の水道は、定期的に検査を行い、水質基準を満たした安全な水を提供しています。
水道が利用できる地域では、飲用だけでも水道を利用することをおすすめします。