水質汚染の影響

水質汚染とは、河川や湖沼、海洋などの水質が悪化することです。
基準は、化学物質や有機物、細菌の量、色の変化、濁り具合などさまざまです。
水質汚染は生態系に大きな影響を及ぼし、絶滅危惧に追い込まれている生物も多数報告されています。
水生生物の生きる場所や命を奪い、生物多様性を阻害するだけでなく、水産資源の減少という形で人間にも影響を及ぼすのです。
また、世界では毎年2億5,000万人以上の人が水質汚染による病気で苦しんでいます。

日本も高度経済成長期に水質汚染が大きな問題になり、水俣病やイタイイタイ病などの水因性の病気が多数発生し、それを教訓に厳しい排水規制や下水処理の整備が進んだ背景があります。

今も水質汚染による病気が蔓延しているのは、やはり途上国です。
アフリカでは都市部を除いたほとんどの場所で水道施設や浄水施設が整備されておらず、人々は泥や細菌、動物の糞尿が混ざった水を飲まざるを得ず、下痢や重篤な感染症などに感染し多くの人が命を落としています。

 

経済的な損害

水質汚染は、時に経済にも大きな打撃を与えます。
農業や化石燃料の使用から生まれる窒素やリンが大量に海に流れ込むと、富栄養化が進み、藻類の大量発生や貧酸素水塊を作り出し、多くの水生生物が死ぬことで漁業にも多大な損失を与えます。
また、日本では東日本大震災で被災した福島第一原発から、大量の放射性セシウムが海へ放出されたことが報道で大きく取り上げられました。
現在は海産物の安全性が確認されているにもかかわらず、汚染のイメージは残り、その風評被害から漁獲量や水産加工業の生産力が回復しきれないなどの経済的損失を被っています。
こういう問題では、管理する人にも責任があるでしょう。

 

水質汚染の原因

日本でも水質汚染は起きており、健康被害や生態系へのダメージなどさまざまな影響を及ぼしています。
水質汚染対策を始めるためには、まず原因を知ることが大切です。
水質汚染の原因は、主に産業排水、生活排水、地球温暖化の3つです。

 

産業排水

産業排水とは、工場や農場などから排出される水です。
有害物質が含まれた産業排水が河川や湖沼に流れ出ることによって、水質汚染が起きてしまいます。
かつて水俣病やイタイイタイ病が大きな問題になりましたけど、これらの公害の原因は産業排水です。
その後、規制が強化され、今では水質汚染につながる産業排水は出にくくなっています。

 

生活排水

生活排水とは、台所やトイレ、風呂、洗濯など、日常生活で発生する排水のことを指します。
水の汚れの度合を表す指標に「BOD」というものがあります。
BODとは、微生物が水の汚れを分解する際に使う酸素の量です。
水に含まれる酸素は、魚や水中に住む昆虫にとって、生きるために必要なものです。
微生物が汚れの分解にたくさんの酸素を使ってしまうと、魚の窒息死などにつながります。
そのため、BODが高いほど環境への負荷が大きいということになります。

 

地球温暖化

水質汚染の原因は、水を直接汚染するものだけではありません。
地球温暖化も原因の一つと言われています。
水温が上昇することによって、植物プランクトンの増殖や生態系の悪化などが起き、水質の悪化につながっていると考えられています。
その他にも、海面上昇による地下水の塩水化や河川取水障害など、さまざまな要因が水質を変えてしまっているのです。

 

生活排水の影響が深刻

水質汚染の原因の中でも、家庭から排出されている生活排水の影響が深刻といわれています。
生活排水を減らすためには、各家庭が意識して行動することが必要です。

 

食べ残しをしない

使用済みの天ぷら油やマヨネーズなどのBODは非常に高く、水質への影響が大きいです。
生活排水として流れ出ると水質汚染につながるので、食べ残しをしないようにしましょう。
自宅で料理する際は食べきれる分だけ作り、買い物の際にも食材が残らないように考えて買うものを選ぶのがポイントです。
外食であれば、食べられる分だけ注文しましょう。
フードロスが減ることによって、水質汚染はもちろん、持続可能な社会の実現にも貢献できます。

 

油汚れをしっかりふき取る

洗い物をする際は、油汚れをしっかりふき取りましょう。
生活排水として流れる油を減らすことによって、河川や海への影響を抑えられます。
残った油を再利用したり、やむを得ず捨てるときは新聞紙に捨てたりするなど、油の処理に気を付けましょう。

 

洗剤を使いすぎない

シャンプーや台所洗剤も、水質汚染につながるものです。
シャンプーやリンスは適量を守り、使いすぎに気を付けましょう。
台所用洗剤や衣類用洗剤についても、必要な分だけを使い、水質への負荷を抑える努力が必要です。